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和久井健先生×Official髭男dism対談 完全版

PROFILE

原作者 和久井健

2005年『新宿スワン』で連載デビュー。同作は大ヒットし、2015年に実写映画化。その後、『セキセイインコ』『デザートイーグル』を連載。現在は「週刊少年マガジン」にて『東京卍リベンジャーズ』を連載中。

Official髭男dism ボーカル 
藤原聡

2012年結成、Official髭男dismのボーカル&キーボード担当。
2018年にシングル「ノーダウト」でメジャーデビュー。2019年に「Pretender」で初のNHK紅白歌合戦出場。5月7日にはテレビアニメ「東京リベンジャーズ」OP主題歌「Cry Baby」をデジタルリリース。

お互いの大ファン! 熱狂的なラブコール合戦に

『東京リベンジャーズ』の主題歌を担当することになったときのお気持ちをお聞かせください。

藤原 主題歌のオファーを頂戴した時に作品を読ませていただいたんですけど……ものすごいスピードでハマってしまって! 今では単行本が出るまで我慢ができなくて、「マガポケ」で毎週読んでいます! 本当に大好きになりました。

和久井 ありがとうございます!!

藤原 こんな素晴らしい作品の主題歌を書かせていただけるなんて! 自分でもすごい熱量で曲を作れた自覚があるので、本当に嬉しくてありがたかったですね。『東京卍リベンジャーズ』はメンバーもスタッフ、みんなでめっちゃハマってます。「(自分の)推しキャラは誰か」って盛り上がってますよ。

ちなみに藤原さんの推しは誰ですか?

藤原 僕は場地君ですね! 千冬と場地の関係はグッときちゃいますね。

主題歌がOfficial髭男dism(以下ヒゲダン)だと聞いたとき、先生はどう思われましたか?

和久井 めちゃくちゃビックリしました! とても好きなアーティストだったので「もしかして嘘なのかな、騙されているのかな?」と思いました(笑)。しかも曲がめちゃくちゃカッコいいじゃないですか! 歌詞も作品の内容に寄せてくださってて嬉しかったですね。

藤原 よかったー! そう言ってもらえてすごく嬉しいです。
ヒゲダンって、とてもポップな音楽をやっているイメージがあると思うんですよね。今回、このアニメの曲を書かせていただけるのであれば、自分たちのバンドとしてもひとつ突き抜けたいなという思いがあったんですよ。出来上がったものを聞いてみて、それを楽曲に入れることができたのではと手ごたえを感じています。主題歌という形でコラボさせてもらっていなかったら、開かれなかったかもしれないバンドの新しい扉が開けた気がしているんです。よりバンドの活動が面白いなって思えたきっかけにもなってくれました。

『Cry Baby』のキモは転調 ミスを昇華させるクリエイターの視点

和久井先生は以前からヒゲダンのファンとのことですが、この機会に聞いてみたいことはありますか?

和久井 いっぱいある!(笑)。ヒゲダンの曲って、ワードセンスが他と全然違うように感じているんです。独特なのにキャッチーというか。自分の場合、漫画を描いているとつい尖った部分を出してしまうので、そこを担当さんに少し丸くしてもらってから世に出すようにしているんですが、藤原さんはメンバーやスタッフと相談することってありますか?

藤原 僕も結構尖った感じの歌詞を書いてしまうこともあって……。スタッフやメンバーから意見をもらう時はありますね。「ここは絶対に譲れない!」ってフレーズじゃなければ、意見をいただいて調節することはあります。『Cry Baby』だと「この腐りきったバッドエンドに抗う」はじめ、いくつか「絶対変えたくない!」なフレーズがあるんです。でも、それ以外のところはアレンジやメロディに合わせて手を入れているところもあります。必ず曲の核になっている部分があるんですよ。

和久井 そこだけは譲らないというのがあって、あとは相談したり調整する、と。

藤原 そうですね。メロディを先に作って、歌詞を後からハメていくことが多いんですけれど、そういう核になる部分って言葉とメロディが同時にパッと浮かぶんです。そういう部分は、もう音楽の神様からのギフトだと思うことにして、なるべくそのまま使おうと思っています。

和久井 『Cry Baby』のサビの「不安定な~」の部分で、曲調も不安定になるじゃないですか。あそこもそういう感じで生まれたんですか?

藤原 あそこは元は違うメロディだったんですが、ピアノを不意に間違えてしまったんです。でも、それが結果的にすごい転調の仕方をしていて面白くて! そういうのも音楽の神様からのギフトだと思うようにして(笑)、そのまま使いたいなって思ったんですよ。

和久井 あそこすっごいかっこいいですよね。

藤原 ありがとうございます、よかったー! 実は心配だったんです。

和久井 そうなんですか?

藤原 「カラオケで突然キーを下げられたような感じがする」って言う人もいて。僕の中では死ぬほどかっこいいと思ってたんですけどね。この曲、フルで聞くとかなり転調を繰り返しているんですが、僕のなかで、「転調する」というのがタイムリープに近しいものを感じているんです。

和久井 わかります! それすごく感じました。

藤原 武道が12年前と今を行き来するように、自分の曲の中で音を移動していったら面白いんじゃないかって。本当にきっかけはささいなコードのミスなんですけど、でも結果的にこういうアレンジになったのは僕としても嬉しく思っていますし、これがなかったら面白みに欠けていたかなとも思います。

和久井 そういう「ミス」を自分の中でひっかかりとして拾い上げて、ちゃんと表に出せるのが才能だと僕は思っているので、今の話はすごいことですよね。それが引っかからない人のほうが多いじゃないですか。

藤原 ありがとうございます。本当に転調はかけてよかったなって思ってます。でも、僕が初めてメンバーにこの曲を披露した時、みんな笑いましたからね! 「これどうなってんの!?」って。僕もよくわからない(笑)。

和久井 僕も「どうなってんの!?」と思いました(笑)。

創作の最重要課題は「睡眠」?

おふたりの熱量がすごいですね。

和久井 普段聴いている、しかも今の時代の音楽の一番上にいる人の話が聞けると思うと……なんか言葉が詰まっちゃいますよね。何を話していいのかわかんなくなってきます。緊張するし(笑)。

藤原 緊張します(笑)。僕、先生にお会いしたら聞きたかったことがあるんですけど……。キャラの誕生日ってどうやって決めているんですか?

和久井 まず自分の近しい人の誕生日を使って、あとは穴埋めみたいな感じで決めています。

藤原 僕、マイキーと誕生日が1日違いなんですよ、8月19日なんで……。

和久井 そうなんですか!?
マイキーは獅子座にしたくてその日にしたんです。誕生日自体はわりと適当に決めているんですが、星座は気にしていますね。
僕、すごいロマンチストなので、それでラブソングが大好きなんです。『Pretender』なんて本当にすごく好き。でも、恋愛的なものを作るのは苦手(笑)。自分で書くのは苦手なんです。

藤原 でも、ヒナと武道の関係、とても素敵じゃないですか。

和久井 なんというか、青春のドキドキワクワクというか……少年感が出せないんですよね。あんまりマトモな青春を過ごしてこなかったので恋愛観が普通じゃなくて……。「普通の恋愛」については担当に聞きまくってます(笑)。

藤原 へー! 僕も『Pretender』の打ち合わせの時に、プロデューサーに「UKロックみたいな感じにしたらどうか」と言われたんですが……まったくこれまで通っていなかったジャンルで! UKに詳しいスタッフにいろいろ聞いて、そのインスピレーションをひっくるめて作ったのが『Pretender』でしたね。

和久井 あまり自分の中にない要素だったんですか?

藤原 メロディや歌詞はJ-POPなんですが、音の作り方は僕の中にないものでしたね。実はこれまで好んでバンドっぽい音楽を聞いてこなかったんです。どちらかというとポップスやブラックミュージックを聞いていることが多くて。なので「UKロックって……?」というところからのスタートでした。でも、それによって人生がめちゃくちゃ変わりましたし、それによって自分が作れるものも広がったんですよ。知らないことを誰かに聞くという姿勢は大事にしようって思いました。

和久井 自分の中で『Pretender』で変わったと思うことがあるんですか? 僕からすると『ノーダウト』のあたりから「この人たちすげぇな!」って思っていたんですが……。

藤原 『ノーダウト』くらいから曲の作り方や出てくるものが変わってきたなという感じはあるんですけど、『Pretender』は単純に僕らを取り巻く環境を大きく変えた曲という感じですね。『ノーダウト』の時は……すごい申し訳ない話なんですけど、当時2週間で曲を作らないといけない状況だったんですよ。

和久井 え!?

藤原 あんまり言うとプロデューサーに怒られちゃうんですけど(笑)、デモを出せど出せどOKが出ず、結局7曲くらい作った中で採用されたのが『ノーダウト』なんです。

和久井 すごい、没になった曲全部聞きたい!!

藤原 その時、全国のショッピングモールで無料のアコースティックライブをやっていたんです。そのツアー中に来たお仕事だったので、各地でライブしながらその合間で楽曲を作ってたんです。あの時が一番しんどかったですね……。寝不足だし疲れてるし、「パンチが欲しい? パンチって何?」「もうわからん!」ってなりながらレコーディングをしました。でも、その体験が後の自分の制作の体力を付けてくれたなと思います。それとしんどい想いをすると何かこじ開けられるものがあったのか、その先はどんどんアイディアが浮かんでくるようになりました。

和久井 じゃあ、手ごたえみたいなものがない状態で提出したってことですか?

藤原 手ごたえ自体はあったんです。ただ、作った物の善し悪しの判別ができないくらい、その曲のことばっかり考えていて……。たぶん寝不足もたたったんでしょうね(笑)。ジャッジが難しくなっていたんですよ。もっとちゃんと寝て、睡眠時間を確保しておけばよかったなって思ってます。先生は徹夜とかされますか?

和久井 全然しない。むしろ隙あらば寝てます。寝ないと何も出てこないので。

藤原 やっぱりそうですよね!

和久井 時間を見つけては寝て、起きて、仕事してるんで、たまにわけがわからなくなりますね。ここ3ヶ月くらいは、起きている間はリベンジャーズのことしか考えていないせいか、夢もそんな感じになってます。

藤原 夢も?

和久井 夢の中まで出てくるんですよ。原稿を失くす夢を観ます。仕事の失敗をする夢をよく見るんですよね……。

藤原 あっ! それわかります! 僕もステージから落ちる夢をよく見るんですよ。ライブ中に知らない曲が始まったり。

和久井 (笑)。それは怖い!

藤原 寝ることが一番大事ですよね。『ノーダウト』を作っていた頃の自分に教えてあげたい……。

和久井 (笑)。めちゃくちゃ好きななんですよ、映画『スティング』の音楽が好きなんですが、『ノーダウト』のメロディのちょっとイカサマっぽい感じが好きで。仕事をしているときに聴くと作業が捗ります。

藤原 めちゃくちゃ報われます!

活動を長く続けるには、まずクリエイター自身が「楽しむ」こと

和久井 ヒゲダンの曲って余裕を持って作っている印象があったので、今日のお話はすごく意外でした。なんというか、ヒゲダンの音楽って物語があるじゃないですか、聞く側に想像させるというか。それこそ『ノーダウト』だったら、僕の中では詐欺師がトランプで詐欺を働いているようなイメージ。その軽快なイメージが仕事を捗らせるんでしょうね。インスピレーションになるんです。『115万キロのフィルム』なんて入り方が本当にすごいでしょう?

藤原 あれは初めて歌詞から先に作った曲ですね。歌詞が先だったからこそああいう歌い出しになったんです。

和久井 そうなんですね。

藤原 自分の中で、なるべくルーティンにならないようにしよう、というのがあるんですよ。今回の『Cry baby』は、「鬼のように転調してやろう!」と思って作っています。たぶんですけど、フル尺で10回くらい転調してるんですよね。それくらい過度な転調でも、「音楽として楽しめるものを作る」という挑戦もありました。とにかく長くバンド活動を続けたいという気持ちがあって。一番大事なのは、自分がその活動を生業として過ごしていく人生に飽きないことだなと感じているんです。

和久井 でも、飽きそうにないですよね。楽しんで作っている感じしかしない。

藤原 楽しくはやっていますね!

和久井 そういう「自分たちは楽しんでますよ」というイメージを世の中に出すのって大事なことじゃないですか。それがすごくうまくいっている人たちだなと思います。

藤原 楽しみがないとなかなか。クリエイティブに関わる仕事って、時間がかかるし、仕事のオンオフもあってないようなものですし、楽しめたら天国だけど、楽しめなかったら……地獄だろうな、って。

和久井 ですねぇ(笑)。

藤原 でも、締め切りが迫ってる! けど何も浮かばない!! っていう苦しみはありますけどね(笑)。

和久井 わかります!(笑)。

最後に、本作の見どころ、楽曲の聴き所をお願いします。

藤原 こんなに素晴らしい作品の主題歌を書かせていただいたことが、本当に自分の音楽人生においても誇らしくて幸せです。この作品を通して生まれた楽曲なので、OP映像などを見ても自分のなかではすごく「合っているな」と感じています。楽曲と作品のコラボレーションを楽しんで聴いていただけたら嬉しいです。OPサイズでももちろんすごくパワーが籠った作品になっているんですが、時期にフルでもお届けできると思います。一貫して、この作品を経て得た自分の価値観を歌詞やメロディやサウンドに投影させていますので楽しみにしていてください。

和久井 アニメ化企画が始まって、脚本の段階から僕も参加させていただいているんですが、ほぼほぼ言うことがない状態です。逆に自分の作品の足らない部分を少しずつ足してくださっていて、脚本の時点で大満足しているくらいなんです。そこに画がついて、アニメになったときに、やっぱりすごくかっこいいし面白くて。ぜひこの気持ちをファンの方々に共感していただきたいですね。世に出るのが楽しみです。